種牡馬サトノクラウンが大逆転!初年度産駒タスティエーラがダービー勝利で一気に人気サイアーの仲間入り

サトノクラウン産駒のタスティエーラが、日本ダービーを勝利しました。
これは父サトノクラウンにとって初年度産駒でのダービー勝利という快挙達成となりました。
そんな勢いに乗るサトノクラウンですが、一時は種牡馬としてかなり厳しい状況に追い込まれていました。
しかし最近になり一気に逆転の兆しを見せています。
今回はそうしたサトノクラウンの逆転劇について見ていきたいと思います。
クラシック制覇間近だったサトノクラウン

まずは簡単にサトノクラウンの現役時代について見てみましょう。
サトノクラウンは2012年3月10日にノーザンファームで生まれました。
父マルジュ、母ジョコンダ、母父ロッシーニという血統です。
母のジョコンダは現役時代にアイルランドのリステッド競走を制しており、
2番仔がイギリスでG1を制しています。
父のマルジュはアイルランドで1992年に種牡馬入りをし、
フランスオークスを制したシルシラなどを輩出しました。
そして2011年に高齢により種牡馬を引退しましたが、
その最後の産駒として生まれたのがサトノクラウンでした。
そんなサトノクラウンは2013年のセレクトセールで5800万円で里見治氏により落札されています。
G1馬の全弟としては比較的安価での落札でしたが、
王冠を意味する「クラウン」を付けていることから陣営はかなり期待していたと考えられます。
そのサトノクラウンは2014年10月15日に東京芝1800mでデビューすると
東京スポーツ杯2歳ステークス、弥生賞と3連勝し一躍クラシックの主役となります。
ただ、東京スポーツ杯2歳ステークスではゲートで立ち上がり発走調教再審査となるなど
若さも目立っていました。
それでも無敗で弥生賞を制覇した馬はこれまで9頭いましたが
そのうちの7頭が三冠のうち最低1つは勝っており、
中でもシンボリルドルフとディープインパクトの2頭は後に三冠馬となったという実績があります。
そのような過程を歩んできたサトノクラウンは、当然皐月賞では1番人気に支持されます。
しかし皐月賞では懸念された若さによりスタートで出遅れ、後方からとなってしまいます。
そして4コーナーで大外を回るロスも響き、ドゥラメンテの6着に敗れてしまいました。
雪辱を誓ったダービーでも出遅れ後方からとなってしまい、
最後は追い上げたものの再びドゥラメンテに敗れ3着となりました。
その後は古馬になってから京都記念を制したものの、
天皇賞(秋)では14着に敗れるなどなかなか歯車が噛み合いませんでした。
しかしそれでも暮れの香港ヴァーズでは見事勝利し初G1制覇を海外で果たします。
さらに翌年には宝塚記念も勝利し、国内G1のタイトルも獲得しました。
その後は残念ながら勝利を飾ることはできませんでしたが、G1を2勝した実績、
そしてサンデーサイレンスの血が入っていない血統面から2019年より社台スタリオンステーションで種牡馬入りを果たします。
下降気味だったサトノクラウンの種牡馬人気

初年度の種付け料は100万円で、社台スタリオンステーションとしては比較的安い価格帯だったこともあり、
種付け頭数は207頭にも及びました。
これは種牡馬全体で見ても、ホッコータルマエに次ぐ8番目に多い数で
新種牡馬の中では最も多い数字となりました。
2番手のリアルスティールが177頭ということからも、いかに非サンデー系の血が求められていたのかが分かります。
そしてこの人気を背景に、翌年の2020年には150万円に値上げをし135頭と種付けをします。
この時点で初年度の産駒が生まれており、それらの評判が高ければより多くの馬と種付けをすることができるのですが
サトノクラウンはそうではありませんでした。
まず、2020年のセレクトセールでは5頭が上場しましたが
最高額は4950万円に留まりました。
次点が2200万円で、購買者がサトノクラウンの所有者であった里見氏が代表を務めるサトミホースカンパニーだったということからも
あまり皆が競り合うような人気の高さではなかったことが分かります。
続く2021年には5060万円で取引されたケースもありましたが、
この年にセリで落札された47頭のうち22頭が500万円以下で取引されており
あまり生産者にとって儲かる種牡馬とは言えない状況でした。
そのため3年目の2021年には93頭と、初年度の半分以下になってしまいます。
さらに4年目となる2022年には種付け料を100万円に減額したものの、78頭と過去最低を記録します。
通常ならこのまま種付け頭数は減少を続けていき、
社台スタリオンステーションからも移動となるのが普通の流れとなります。
しかし、サトノクラウンはここからが違いました。
2022年に初年度産駒がデビューを迎えると、その産駒たちが躍動しはじめます。
6月にクラックオブドーンが産駒のJRA初勝利をあげると、
8月には一気に3頭が勝ち上がり、一時はマインドユアビスケッツと並び新種牡馬として最多勝を記録しました。
最終的には中央競馬で63頭がデビューし、13頭が2歳までに勝ち上がりを見せました。
新種牡馬リーディングでも5位に位置し、自身がデビューから3連勝したように産駒も仕上がりの早さを見せたのです。
ただ、1つだけ懸念点がありました。
それがトップクラスで戦う馬がいないことでした。
2歳のG1にはホープフルステークスにボーンイングランデが出走したものの13着に敗れてしまいます。
そして他の馬はG1に駒を進めることができませんでした。
そのため大物の出現が期待されており、
そうした中で待望の重賞勝ち馬となったのがタスティエーラでした。
再び人気種牡馬となったサトノクラウン

タスティエーラは父サトノクラウン、母パルティトゥーラ、母父マンハッタンカフェという血統の3歳牡馬です。
2022年11月の新馬戦でデビュー勝ちをするも、今年の2月に開催された共同通信杯では4着に敗れていました。
そして迎えた弥生賞ディープインパクト記念では、4コーナーで2番手となり直線で早めに先頭に立つと、そのまま最後まで誰も抜かせず勝利しました。
まさに完勝と言えるレースで、父サトノクラウンと同じ弥生賞制覇を果たしたのです。
その後迎えた皐月賞では、ソールオリエンスの追い込みに敗れ2着となったものの、つづくダービーではそのソールオリエンスを封じ込め見事勝利を果たしました。
これによりダービー馬を初年度から輩出したことになるサトノクラウンは、今後かなりの人気を集めそうです。
すでに今年は昨年の活躍を受けて再び種付け料が150万円に増額されましたが満口となっています。
具体的な数はまだ分かりませんが、前年よりも増えることは間違いありません。
今後は初年度からデアリングタクトという牝馬のクラシックホースを出したエピファネイアの様に、
一気に人気が集中する可能性も考えられます。
特にタスティエーラの母父がマンハッタンカフェということもあり、
サンデーサイレンス系の血との相性の良さを証明することができたのが生産者にとって大きな出来事となりました。
今後サンデーサイレンスの血を持つ繁殖牝馬が、サトノクラウンの血を求めて来ることが考えられます。
父の果たせなかったクラシック制覇という夢を産駒が果たし、
父の人気をさらに高めることができるのか。
そういった点からもタスティエーラの今後の活躍に期待したいところですね。
また、サトノクラウンの長所は皐月賞で1番人気になった早熟性とともに、
古馬になってからG1を2勝した成長力も挙げられます。
それらを受け継いでいるはずの産駒には、クラシック後も大いに注目したいと思います。