エーシントップ産駒がJRA初勝利!オーナーの執念で種牡馬入りからエイシンエイトで7年越しに夢を掴む

2023年6月25日、あるマイナー種牡馬の子がJRAで初勝利を飾りました。
その勝利までには種牡馬入りが発表されてから7年以上の月日が流れており、
そこまでの過程を見てもまさに関係者の執念と言えるものでした。
今回はそんなマイナー種牡馬のこれまでと、
産駒の中央勝利により期待されることを見ていきたいと思います。
エーシントップは現役時代には重賞を3勝

今回産駒のJRA初勝利となったのが、エーシントップです。
エーシントップは父テイルオブザキャット、母エコロジー、母父アンブライドルズソングという血統で
2010年3月28日に生まれました。
米国産の馬で、馬主は栄進堂です。
「エイシン」や「エーシン」の冠名で知られる栄進堂は
元々おもちゃの製造、販売を事業としており、特に鉄道模型メーカーとして有名でした。
現在は主に馬主業を中心としているようです。
そして「エイシン」は父の平井豊光氏の馬、
「エーシン」は息子の平井宏承氏の馬や地方競馬デビューの馬につけるといった使い分けをしていました。
また、テネシーガールなどの「ガール」やキーンランドスワンなどの「スワン」も
平井豊光氏の牝馬につけられていました。
ただ、平井豊光氏が2013年に亡くなったことなどもあり
現在は基本的に「エイシン」をつけています。
エーシントップは2010年産で、
「エーシン」の冠がつけられている実質的に最後の世代となります。
そんな有名馬主の所有となったエーシントップは、
名前から当初から期待をされていたことが分かります。
1つ上のG1馬エーシンフォワードがいる西園正都調教師のもとで調教を積んだエーシントップは、
2012年6月17日に阪神芝1400mでデビューを迎えます。
するとそこから3連勝でG2京王杯2歳ステークスまで勝利し、
一気にこの世代のトップ戦線へと駆け上がります。
年末の朝日杯フューチュリティステークスこそロゴタイプの8着に敗れますが、
翌年2013年のシンザン記念、そしてニュージーランドトロフィーと重賞を連勝し、その実力を見せつけます。
そしてその勢いで臨んだNHKマイルカップでは1番人気に支持されますが、
直線で不利もありマイネルホウオウの7着に敗れます。
この敗戦でエーシントップは精神的にダメージを負ってしまったのか、
その後はスランプに陥ります。
それでもダートの霜月ステークスを勝利し、
高松宮記念で4着に入るなど古馬になってからも健闘はしますが、
ニュージーランドトロフィー以来となる重賞を勝つことはできませんでした。
そして2015年12月のカペラステークスを最後に、現役を引退することとなりました。
G1こそ勝てなかったものの、重賞を3勝していることや
日本では貴重なテイルオブザキャット産駒ということもあり、引退後は種牡馬入りを果たします。
とはいえ、種牡馬生活はなかなか順調とは言えなかったようです。
エーシントップは2016年1月に引退をしましたが、
初めて種付けをした記録が残っているのは、2018年シーズンのことです。
それまでの2年間は栄進牧場で種牡馬入りをしたものの、
需要がなかったのか、それとも何か他の理由があったのかは分かりませんが
種牡馬としての活動をしていなかったようです。
種牡馬入り3年目となる2018年に初めて種牡馬としての活動をスタートすると
この年は7頭と種付けをします。
こうしたマイナー種牡馬の場合、オーナーによるバックアップが必要となるのですが、
エーシントップの場合も初年度に生まれた4頭はすべてオーナーの馬でした。
そして翌年の2019年からはイーストスタッドに在厩し、
本格的に種牡馬として活動を開始しますが、その後も基本的にはオーナーと関連する馬との種付けに留まります。
それでも2019年には15頭、2020年には19頭と
この成績の種牡馬としては比較的多くの繁殖牝馬と種付けをしていきます。
その中にはチューリップ賞などを制したエイシンルーデンスなどもおり、
オーナーがいかにエーシントップに期待していたのかが分かります。
ただ、オーナーの馬以外に繁殖牝馬がほとんど集まらなかったためか、
2020年11月には鹿児島県の新保牧場へと移動することが決まります。
こうして鹿児島で種牡馬生活を送ることになったエーシントップは
2021年には16頭、2022年には14頭と種付けをしています。
これは九州での需要が少しあったことと、
オーナーが毎年鹿児島まで繁殖牝馬を連れてきて種付けをした結果でした。
こうしたオーナーの執念とも言える行為が、ついに実る時がやってきます。
Expand AllついにJRAでエーシントップ産駒が勝利

エーシントップ産駒は初年度の4頭のうち3頭が競走馬として出走し、
エイシンスタートルが船橋で1勝をあげています。
また、2年目の産駒は9頭が生まれ、現在7頭が出走しています。
そしてその中のエイシンエイトが、2023年6月にJRAで初勝利をあげました。
このエイシンエイトは2020年1月25日に新ひだか町の水丸牧場で生まれました。
まだエーシントップが北海道にいた時に種付けをした子です。
父エーシントップ、母エイシンモルト、母父ハーツクライという血統で
母のエイシンモルトはこれまでもエイシンデピュティ、エイシンアポロン、エイシンプレストンと
オーナーの馬と種付けをしています。
ただ、エイシンモルトの子で中央を勝利した馬はおらず、
エイシンエイトもデビューはホッカイドウ競馬でした。
そんなエイシンエイトは2022年5月に門別のJRA認定フレッシュチャレンジに出走すると、
単勝1.9倍の1番人気に応えて見事勝利します。
さらに2戦目となるJRA認定ウィナーズチャレンジでも勝利し、
その後はオープン競走や地方重賞に挑戦していきます。
ただその後は中々勝利をあげることができず、
2023年3月時点で12戦2勝という成績でした。
それでもこの馬の能力を信じていた陣営は芝を試してみたいということで
エイシンエイトを中央の田中剛厩舎へ移籍させます。
移籍初戦にはいきなりG2ニュージーランドトロフィーへと出走しますが、
ここでエイシンエイトは高い芝適性を見せます。
これまでの実績から16番人気と最下位人気になったエイシンエイトでしたが、
最後はエエヤンから0.7秒差の9着に入りました。
そして次に選んだ自己条件の2勝クラスHTB杯でその時が訪れます。
エイシンエイトは道中2、3番手を追走し、
最後の直線では逃げるメイショウエニシアを追いかけます。
徐々にその差を詰めていくと最後は同時にゴールを切りました。
そして長い写真判定の結果、同着で見事HTB杯を勝利したのです。
これが、エーシントップにとって初の産駒JRA勝利となりました。
種牡馬入りを発表した2016年1月から、実に7年後の勝利でした。
初勝利が新馬戦や未勝利戦ではなく、さらに同着という非常に珍しい結果となりましたが
これもオーナーの執念が見せたものかもしれませんね。
こうして2勝クラスを制したエイシンエイトは今後3勝クラスへと進みます。
そこでも勝てば次は中央のオープンクラスになります。
そのオープンでも結果を残せれば、エーシントップの評判は高まっていくはずです。
オーナーの執念が報われて、エーシントップが人気種牡馬となれるか
今後のエイシンエイトの走りに注目したいですね。