3億円超えの競走馬サレストノーウェア、5歳でついに初勝利を飾る

セレクトセールで今年も高額馬が続々と落札されましたが
残念ながらそうした馬でもなかなか走らないケースがあります。
中には数億円したにも関わらず未勝利で終わるということもあります。
今回はそんな期待どおりにいかなかった高額馬が
先日ついに自分の生きる道を見つけた件について見ていこうと思います。
3億円を超える超高額馬ザレストノーウェア

今回見ていくのは、ザレストノーウェアという馬です。
彼は父ディープインパクト、母ミュージカルウェイ、母父ゴールドアウェイという血統で
2018年4月3日に生まれました。
母のミュージカルウェイはフランスでG2ドラール賞を制し
香港カップでも3着に入った馬です。
そして全姉には2015年にオークスを制したミッキークイーンがいるという良血です。
そんなザレストノーウェアはミュージカルウェイの2018として、
1歳になった2019年にはセレクトセールへと上場されます。
すると開始からどんどん値が上がっていき、
最終的に税抜3億6000万円で落札されました。
落札したのはアドマイヤの冠で知られる近藤利一氏でした。
近藤利一氏はこれまでにアドマイヤムーンやアドマイヤベガなどの名馬を多数所有してきましたが、
2019年夏にがんに罹患していることを公表し闘病していました。
1998年に行われた第一回のセレクトセールから参加し
高額馬を買い続けてきた近藤利一氏は、この年のセールの2週間前に抗がん剤治療を終えたばかりで
体力的にも参加は厳しいかと思われましたが、なんとか参加しこのセールに臨みました。
そして当時の1歳馬として史上最高額となる3億6000万円で落札したのがこのザレストノーウェアでした。
この年に近藤利一氏はのちにリアドと名付けられるタイタンクイーンの2019を4億7000万円で落札するなど
2日間で約12億円分の馬を落札し、G1で活躍する馬が出ることを期待していました。
しかし、その後病状が悪化し近藤利一氏は残念ながら2019年11月17日に亡くなってしまいました。
これにより所有馬は他の方が引き継ぐこととなり、
リアドとザレストノーウェアは大塚亮一氏へと引き継がれることとなりました。
ザレストノーウェアにアドマイヤという冠名がついていないのはこのような事情があるからです。
こうした近藤利一氏の忘れ形見とも言えるザレストノーウェアは
落札時から予定されていた友道康夫調教師に預けられ
3歳となった2021年2月にデビューを迎えました。
厳しい戦いを強いられるザレストノーウェア

鞍上には名手武豊騎手を迎え、万全の体制でデビュー戦を走りましたが、ここでは残念ながら5着に敗れます。
そして次走には川田将雅騎手が乗り、1番人気に支持されるも10着と大敗し、
さらに続く9月の3走目には福永祐一騎手が乗りましたが2番人気の7着に敗れます。
この敗戦によりザレストノーウェアは出走できる未勝利戦がなくなってしまい、
次走から1勝クラスへの格上挑戦をすることとなりました。
未勝利馬が1勝クラスに出走する場合、
基本的にフルゲート割れのレースでないと使うことができません。
そのため狙ったレースに使うことができず、
調整が難しいという問題があります。
そうしたことから地方へ転出されるケースが多いのですが、
3億6000万円の高額馬であることや、父がダートをあまり得意としないディープインパクトということから
格上挑戦となったのでしょう。
またこの格上挑戦へ向かう過程で障害練習もしており、
この時から障害への転向も視野に入れていたようです。
こうして迎えた4戦目となる1勝クラスでは、12番人気の15着に敗れてしまいます。
これにより平地でやっていくことは難しいという判断がされ
4歳となった2022年1月には障害の未勝利戦へと出走することになりました。
すると早速3着に入り、センスの良いところを見せます。
これにより障害で才能を発揮するかと思われましたが、
続く未勝利戦では7着に敗れてしまいました。
平地でも障害でも勝利をあげることができないことから、
ついにザレストノーウェアは友道康夫厩舎から
新開幸一厩舎へと転厩することとなります。
色々と事情はあるのでしょうが、やはり友道康夫厩舎は
ドウデュースなど多くの活躍馬がいる人気厩舎ということもあり、
未勝利で4歳を迎えた馬をこのまま管理することは難しかったのかもしれません。
こうして新開幸一厩舎に移ったザレストノーウェアは
再び平地に戻り3戦を走りますが、7着・14着・9着と冴えません。
これにより平地で戦っていくことは難しいと判断され、
また障害へと戻ることとなります。
ここまで9戦して3着1回のみと、
3億円以上した馬としては非常に厳しい結果となってしまっていました。
それでも陣営は諦めず、障害戦での勝利を目指しレースを使っていきます。
再びの障害未勝利戦では4着・9着・2着・3着・5着と勝てはしないものの着実に成果を出していきました。
そして2023年7月9日、ついにその時がやってきます。
簑島騎手と4回目のコンビとなった障害未勝利戦では
道中4番手から徐々にポジションを押し上げ、途中で先頭に立ちます。
そしてそのまま最終障害を飛ぶと
2番手から迫るアースブレイブを振り切り勝利したのです。
再び障害に転向してから6戦目、通算では15戦目での嬉しい初勝利となりました。

近藤利一氏の夢を乗せ、3億6000万円という非常に高額な価格で落札されたザレストノーウェアは
平地での活躍こそ叶いませんでしたが、ついに障害でその才能を輝かせることができたのです。
そして5歳の7月につかんだこの勝利は、1つの記録を更新しました。
それはセールで取引された馬の中で、史上最高額の障害戦勝利馬という記録です。
これまで障害競走を勝利した馬の中で最高落札価格だったのは
アドマイヤアゼリの2億5000万円でした。
今回ザレストノーウェアが勝利したことで、
この記録を1億円以上上回ることとなりました。
陣営としては平地競走でG1を勝つことを期待していたのでしょうが、
それでもこうして別の場所で花を咲かせることができたというのは素晴らしいことですね。
今回の勝利によりザレストノーウェアは今後障害オープンへと臨みます。
オープンはさらに強いメンバーが揃いなかなか厳しい戦いになっていきそうですが、
いずれJG1を勝利してくれることを期待したいですね。
アドマイヤアゼリは障害オープンを勝利することができませんでしたから、
もしザレストノーウェアが勝利すれば、障害オープンを勝った馬の
最高落札額を大幅に更新するはずです。
まずはその快挙を目指してもらいたいところです。
今年のセレクトセールでも多くの馬が1億円を超える価格で落札されました。
1日目だけでも28頭もの1億円超えの馬が誕生しています。
その中には期待以上に活躍する馬もいれば、残念ながら期待に沿うことのできない馬もいるはずです。
それでもなんとかザレストノーウェアのように自分の居場所を掴めたら良いですね。
5歳になって掴んだ初勝利は、他の高額馬たちにとって
1つの見本となったのかもしれません。