ハルオーブは地方で輝けるか。未勝利界のアイドルが門別で移籍デビュー

JRAでは3歳未勝利が終了し、
勝つことのできなかった馬は格上挑戦や障害への転向をするか
地方競馬へ移籍することになります。
そうした中、今年は一部のファンの間で未勝利界のアイドルとも呼ばれる馬も
地方競馬への移籍が決まりました。
果たしてここから彼は再び中央に戻ってくることができるのでしょうか。
今回はそんな未勝利馬の中でも話題になっている
ハルオーブという馬について見ていきたいと思います。
未勝利をとにかく勝てなかったハルオーブ

ハルオーブは父ディーマジェスティ、母ハルダヨリ、母父ファルブラヴという血統の3歳牡馬です。
父のディーマジェスティは2016年の皐月賞馬で、
マカヒキとクラシック戦線でしのぎを削りました。
そして母のハルダヨリは2014年にJRAでデビューしたものの、5戦して未勝利に終わり
その後繁殖入りをした馬です。
そんな2頭の親から生まれたハルオーブは、1歳の頃にユニオン・オーナーズ・クラブにおいて
総額1000万円、1口5万円で募集にかけられました。
その後順調に育成が進められると、
美浦の武井亮調教師のもとに入厩します。
武井亮調教師は1980年生まれで今年が開業5年目となる若手ですが、
ダービー3着のハーツコンチェルトなどを管理する将来有望な方です。
そんな武井厩舎で調整が進められると
ハルオーブは2022年7月10日に福島の芝1200mでデビューを迎えます。
このレースには関東で上位常連の三浦皇成騎手が騎乗し、
4番人気に支持されます。
レースでは好スタートから道中2番手を進み、後は先頭を捉えるだけというところでしたが
先頭のモンサンスヴニールが逆に突き放す格好となり2着に敗れます。
それでも2歳の7月に2着に入ったことや、2番手追走で上がり3ハロン2位という脚を使っていたことから
勝ち上がりはすぐだと見られていました。
そして続く2戦目となった8月14日の新潟芝1200m戦では
再び三浦皇成騎手が騎乗し、今度は堂々の1番人気に支持されてレースへ挑みました。
すると今度は道中4番手を進み、直線を迎えると
ラスト200mほどでグイッと伸び一瞬先頭に立ちますが
内の狭い所を突いてきたリバーラに迫られ、クビ差敗れてしまいます。
リバーラはこの次のレースでG3ファンタジーステークスを制しており、
相手が悪かったとしか言いようがありません。
しかしそのような重賞級の相手に対してタイム差なしのレースをしたことを考えれば
ハルオーブは上のクラスでもやれる実力の持ち主だということが分かります。
そして次走となった3戦目ではまたも1番人気に支持されますが、
今度は道中、内の馬が外側に斜行したことで前の馬に触れてつまづき、三浦騎手が落馬してしまいます。
幸い人馬ともに大きな怪我はなかったのですが、
勝てる大きなチャンスをここでも逃してしまいます。
それでも翌月の10月8日には4戦目を走ることができ、
ここでは4着でしたが、前回の落馬事故の影響はないことを示しました。
ただ、こうして4戦をして勝ち星を掴めないハルオーブ陣営は
目先を変えるため、今度はダートへと挑戦させます。
芝で前に行くスピードを持っているので、ダートであればその先行力で押し切れるものと考えたのでしょう。
しかしダートは合わなかったのか、またも1番人気に支持されたものの
道中は9番手付近を進み、そのまま勝ち馬から1.6秒差の9着に敗れてしまいました。
こうしたことから陣営は次の6戦目からは芝に戻し、距離も1600mに少し伸ばすなどしてみますが
2着、3着、2着、2着と惜しいところまでいくものの勝利をあげることができませんでした。
これにより9戦し2着5回、3着1回という成績で未勝利となったハルオーブ陣営は
ここまでデビューから全て騎乗してきた三浦皇成騎手から、横山武史騎手へと鞍上を変更します。
しかし当日は雨が降り不良馬場だったということもあってか1番人気の6着に終わっており、
次走からは再び三浦騎手が騎乗することとなります。
この時すでに3歳の3月が終わろうとしており、徐々に未勝利戦の終了時期が迫りつつありました。
ただそれでもこれまでの成績を考えれば、
これからはメンバーも軽くなっていくこともありいつか勝ち上がれるだろうという想いもありました。
実際、不良馬場で6着に敗れた後は3着、2着、3着と勝利まで後少しというところまで来ていました。
この時はいずれも後ろから追い込むスタイルでのもので、
これまでのように先行して、最後ダラダラとした脚で勝ちきれないハルオーブを
なんとか勝たせたいという陣営が色々と模索していることが見て取れます。
しかしそれでも初勝利を手にすることはできず、
ついに未勝利戦が終了する2023年9月を迎えてしまいます。
これまで15戦0勝ながらも2着7回、3着3回を数えており
後もう少しといったところのハルオーブはラストチャンスである9月2日の3歳未勝利戦に挑みます。
そこでは2番人気に支持されると、道中は11番手を進み後方で脚を溜めます。
そして直線に入ると、三浦騎手とハルオーブは内から隙間を縫っていき
スルスルと位置を上げていきます。
一時は勝ったかと思わせる勢いでしたが、最後は外の馬の脚色が勝り
先頭から0.3秒差の5着に敗れてしまいました。
これにより16戦0としたハルオーブには、もう出走できる未勝利戦がなくなってしまいました。
未勝利馬ながらこれまでの走りで稼いだ金額は2216万円にものぼり、
募集価格1000万円の倍以上となりました。
ただ、未勝利で終わってしまったため
今後現役を続けるのであれば格上挑戦か障害への転向、
もしくは地方競馬への移籍をすることとなります。
そうした中で陣営が選んだのは地方競馬への移籍でした。
Expand Allハルオーブは門別へ移籍

門別競馬へと移籍をし、そこで2勝してJRAへ戻ってくることを選択したのです。
ダートで1戦して9着だったことや、父が芝向きの種牡馬のため
ダートが向くのかという心配はありますが、門別競馬は今年から白砂となっており
比較的芝馬でも対応しやすい馬場になっています。
また、3歳世代であれば南関東よりも強敵は少ないため
勝ち上がり再び中央に戻ってくる可能性は高いと言えそうです。
こうした善戦が続く馬が一回勝てば、その後はポンポンと勝つようになるのも競馬で
ハルオーブには今までの走りはなんだったのかと思わせてくれるような走りに期待したいですね。
ちなみに16戦のうち15戦で三浦皇成騎手が騎乗していましたが、
全てのレースを見た印象では、騎乗ミスと言えるような負けはほぼありませんでした。
ちょうどこの時期1000勝という節目の勝利がかかっていたこともあり、
プレッシャーもあったはずですが、騎乗が悪かったため負けたということではなさそうです。
何よりこうして未勝利の馬に乗り続けていたのは、
なんとかして勝たせたいという思いからでしょう。
陣営としてもなんとか未勝利戦があるうちに勝利をあげたかったことでしょうが、
戦ってきたメンバーや走りの内容などを見ても、
実力的にはJRAの上のクラスでも十分やっていけるものを持っているはずです。
またこうした何度も2着や3着に入りながら
未勝利戦の期間に勝ち上がれなかった馬というのは他にも何頭かいます。
例えばフォードテソーロは13戦して2着3回、3着3回、
エリーズダイヤは6戦して2着2回、3着4回、モーメントキャッチは10戦して2着6回、3着2回などとなっています。
このようなJRAで惜しい競馬をしていて地方へ行く馬は
今後ぜひJRAに戻ってきて、その成長した姿を見せてほしいですね。