
エスポワールシチーVSパイロ!地方競馬のリーディングサイアー争いが面白い
日本の競馬は中央競馬と地方競馬に分かれますが、
その中でも地方競馬はほぼすべてがダートで、砂も中央より深いためパワーが必要になります。
そのため中央競馬とはまた違ったリーディングサイアー争いが起きています。
実際中央競馬でトップを独走しているディープインパクトは、地方競馬では68位と低迷しています。
そんな地方競馬のリーディング争いが、現在エスポワールシチーとパイロの2頭によりかなりの接戦が繰り広げられ、
非常に面白い状況となっています。
今回はそんな2頭の争いについて深ぼってご紹介します。
2頭が大きく突き放すリーディングサイアー争い

これからは2022年9月19日時点での状況で見ていきます。
現在地方競馬のサイアーランキングにおける1位はエスポワールシチーで収得賞金6億3909万円です。
そして2位はパイロで6億3622万円となっています。
その差はわずか287万円差です。
いくら地方競馬の賞金が低いとはいえ、287万円差であれば数日もあれば逆転することも考えられ
かなりバチバチに争っていることが分かります。
ちなみに3位は、これまで地方競馬を引っ張ってきたサウスヴィグラスで4億5713万円となっています。
1位と2位との差が287万円で、2位と3位の差が1億7908万円ということからも
いかに上位2頭が突き抜けているかが分かります。
ちなみに出走回数でいえば、エスポワールシチーが1227回でパイロが1535回と上回り、
勝利数でもエスポワールシチーが177勝、パイロが192勝といずれもパイロが上回っています。
ただ、重賞勝ち数がエスポワールシチーが17勝、パイロが8勝となっており
この重賞での獲得賞金差が、今の順位に反映されているものだと言えます。
では、この2頭は種牡馬としてどの様な特徴を持つのでしょうか。
まずはエスポワールシチーから見ていきましょう。

エスポワールシチーは2005年生まれの17歳で、
現役時代はダートG1を9勝した名馬です。
2014年に種牡馬入りをすると初年度から110頭と種付けをし、その後91頭、68頭と推移します。
そして2016年に初年度産駒がデビューすると、地方競馬で多くの勝ち馬を出したことから再び種牡馬需要が高まります。
2017年には123頭と再び3ケタの繁殖牝馬を集め、翌年には161頭との種付けをします。
こうして一躍人気種牡馬となったエスポワールシチーの特徴は、産駒の地方競馬での高い勝ち上がり率にあります。
例えば初年度産駒で地方競馬に出走した馬は46頭いますが、そのうちの34頭が勝利しているのです。
これは勝ち上がり率73%となり、デビューすれば多くの馬が1度は勝つ計算となります。
また、地方競馬の重賞勝ち馬も初年度に5頭出しており上のクラスでも活躍をしている馬を複数出しているのです。
この傾向は年を重ねても変わらず、現在産駒は280頭が地方競馬で出走していますが勝利した馬は222頭にものぼります。
つまり、79%の馬が勝ち上がっている計算となるのです。
もちろん地方競馬ではクラス分けが細分化されており、1勝だけする馬というのも多くいるでしょうが
それでも出走馬の79%が勝利するというのは異常とも言える数値です。
また、上位クラスの馬としても2017年産のヴァケーションが全日本2歳優駿を勝利しており、
他にも2018年産イグナイターが黒船賞と、かきつばた記念を、そして2019年産のペイシャエスがJRAのユニコーンステークスを勝利しています。
このように産駒がコンスタントに走り、かつ上位クラスでも活躍する馬も出ることからサイアーランキングでも上位に位置するようになりました。
2020年は10位、2021年は6位、そして2022年は9月時点で1位と順調に順位をあげていることからも、
今後地方競馬はエスポワールシチーの独壇場となる可能性があります。
そして、そうした状況に待ったをかけるか期待されているのが、パイロです。

パイロは2005年に生まれた17歳で、エスポワールシチーと同い年です。
アメリカで生まれ、2009年のフォアゴーステークスを勝利した実績から2010年に種牡馬入りをします。
当初はアメリカ国内での種牡馬入りが期待されていましたが、ダーレーグループのオーナーである
シェイク・モハメド氏の後押しにより日本での種牡馬入りが決まります。
エスポワールシチーとは同世代ですが、エスポワールシチーが8歳まで現役だったのに比べ
パイロは4歳で引退したため、4年先に種牡馬入りをしています。
初年度となる2010年には種付け料200万円に設定され、84頭を集めました。
その後は112頭、133頭と推移し、初年度産駒がデビューをするとその活躍っぷりから
翌年には171頭と種付けをします。
そこから現在まで100頭を切ることのない人気種牡馬となっています。
初年度の成績としては地方競馬で33頭が出走し27頭が勝ち上がったため、勝ち上がり率は81%となります。
また重賞勝ち馬も5頭を輩出しており、これだけ見るとエスポワールシチーよりも良い成績に見えます。
現在までを見ても557頭が出走し、423頭が勝ち上がりその勝ち上がり率は75%にもなります。
上のクラスに上り詰めた馬としても、初年度産駒から北海道スプリントカップを勝利したシゲルカガや
2016年産で地方競馬所属の馬としてはじめてJBCクラシックを勝利したミューチャリー、
さらに2017年産からは帝王賞を勝利したメイショウハリオなどを輩出しています。
2020年は3位、2021年は2位と惜しい順位まで来ており2022年に1位となれるかに注目が集まります。
このように、エスポワールシチー、パイロと両方ともに優れた勝ち上がり率を誇り
上のクラスでも活躍する馬を出していることを考えると一体今年はどちらがリーディングサイアーとなるかが分かりません。
その謎を解くカギとしてあげられるのが、サウスヴィグラスの存在です。
Expand Allサウスヴィグラスの穴を埋めた方の勝ち

実は地方競馬ではこれまでサウスヴィグラス産駒が圧倒的な成績を収めていました。
サウスヴィグラスはなんと2015年から2021年まで7年連続で地方競馬のリーディングサイアーとなっており、
まさに絶対王者として君臨していたのです。
しかし2018年に亡くなってしまったため、最後の世代は2018年産の4歳となります。
そしてこのサウスヴィグラスの穴を埋めているのがエスポワールシチーとパイロとなるのです。
つまり、このサウスヴィグラス産駒がこれまで勝利してきた距離やクラスなどを
代わりに勝つことができれば、リーディングサイアーとなる近道となるのです。
それがよりできていると考えられるのが、パイロです。
これはまだサウスヴィグラス産駒がいる2018年産と、サウスヴィグラス産駒がいない2019年産の成績を見比べてみるとその差が分かります。
種牡馬としての優秀さを示す数値としてアーニングインデックスというものがあります。

このアーニングインデックスは出走馬1頭当たりの収得賞金の平均値を1として、各種牡馬の産駒がどの程度稼ぐのかを示すものです。
簡単に言えば1だと平均となり、獲得賞金額の少ない地方競馬でみれば
2以上あれば非常に優れた種牡馬と言えます。
ちなみにディープインパクトの生涯アーニングインデックスは3.83ですが
地方競馬に限定すると0.7と平均以下であることが分かります。
また、サンデーサイレンスのアーニングインデックスは生涯で4.94、
地方競馬でも1.08となっており、まさに異次元レベルの活躍だったことが分かります。
このようなアーニングインデックスで見てみると、エスポワールシチーの生涯アーニングインデックスは地方競馬で2.21となります。
特に4歳世代の2018年産は3.01となっており、非常に優秀な数値であることが分かります。
しかし、サウスヴィグラス産駒のいない3歳世代の2019年産になるとその値は1.60とガクンと落ちてしまいます。
一方でパイロの生涯アーニングインデックスは2.11とエスポワールに若干劣りますが、
4歳世代の2018年産が1.85であるのに比べ、3歳世代の2019年産が1.97と上がっている事がわかります。

これにはパイロ産駒の方が早くから活躍する馬が多いということも関係しているでしょうが、
サウスヴィグラスのいない穴をうまくパイロが埋めているからとも言えます。
今後秋、冬シーズンに3最世代も賞金の多いレースに挑むこととなりますので、
今の調子でいけば、パイロがエスポワールシチーを逆転することも十分考えられます。
リーディングサイアーは収得賞金額が基準ということもあり、
どこかで産駒のミューチャリーやメイショウハリオあたりが大レースを勝てば一気にパイロが1位となるはずです。
とはいえエスポワールシチー産駒にも有望株は沢山いますので、
今後のリーディングサイアー争いには目を話せませんね。
サウスヴィグラスのいなくなった今、次世代の王者が誰なのか決める時が来ているようです。