デアリングタクトのすごい大逆転劇!エリザベス女王杯で復活なるか【買い手ナシ→牝馬三冠】

デアリングタクトのすごい大逆転劇

800万円でも売れなかったデアリングタクト!その逆転劇がすごい

JRA史上初の無敗の牝馬三冠馬デアリングタクト。

競馬界の歴史に名を刻んだ彼女は、実は800万円でも売れなかった馬でした。

今回はそんなデアリングタクトの逆転劇について見ていこうと思います。

800万円でも買い手がつかなかった当歳時

デアリングタクトは、父エピファネイア、母デアリングバードという血統で2017年に生まれました。

父エピファネイアにとって初年度産駒であり、
母のデアリングバードは1戦0勝で現役を引退後、繁殖牝馬セールに出品され
北海道日高町の夫婦だけで営まれている長谷川牧場に360万円で購入されました。

そんな両馬により生まれたデアリングタクトは、生後3ヶ月で「デアリングバードの2017」としてセレクトセール当歳市場で売りに出されました。

このセレクトセールは日本で最も高い売上を誇るセールで、この年は「イルーシヴウェーヴの2017」のちのアドマイヤビルゴが税抜5億8000万円で落札されています。

しかし「デアリングバードの2017」は小柄で貧相に見えたことや母の成績が問題視されたのか、800万円でも買い手がつきませんでした。

そのため仕方なく長谷川牧場がそのまま引き取ることとなりました。

この年の売却率は87.88%で、平均価格が4268万円だったことを考えれば、彼女が当時どれだけ低評価だったかが分かります。

そして翌年の7月、今度はセレクトセール1歳馬セールに出品されると、1200万円の低価格ではありましたが今度は無事に落札されました。

落札した有限会社ノルマンディーファームは、デアリングタクトをあえて昼夜放牧し厳しい環境の中で基礎体力を養成しました。

そして栗東の杉山晴紀厩舎への所属予定馬として、ノルマンディーオーナーズクラブが一口4万4000円、総口数400口、総額1760万円で募集をかけました。

当時のコメントでは「筋の通った血統ですし、馬体や立ち振る舞いから大物感が漂っている」とクラブとして期待している様子が伝わってきます。

実際に本格的な騎乗調教を開始していくと、その反応の鋭さは調教スタッフたちの間でも評判になっていきました。

一気にクラシック候補へ

デアリングタクトがデビューしたのは、2歳となった2019年11月16日のことでした。

京都競馬場の芝1600mでデビューすると、最後の直線で外に持ち出し、そのまま突き抜けて新馬勝ちを果たしました。

この勝利は長谷川牧場にとって、2016年のディスピュート以来約3年ぶりの中央競馬での産駒勝利となりました。

2歳はこの一戦だけで終えると、翌年の3歳は2月のエルフィンステークスから始動します。

このレースではスタートで立ち遅れ、後方の位置取りとなりましたが、
最終コーナーで徐々に進出、直線を向くと、大外から一気に差し切り、後続に4馬身差をつけて勝利しました。

この時の走破タイム1分33秒6は、2007年のウオッカの記録を0.1秒上回るものでした。

この勝利によりデアリングタクトは一躍クラシック候補として注目を集める存在になります。

杉山調教師は「デアリングタクトは繊細なので、気が入りやすくテンションが上がりやすい。
その点を考え、エルフィンステークスの後は4月12日の桜花賞へ直行することにした」と語っています。

そして迎えた桜花賞でしたが、ここでは大本命となる馬が不在でした。

有力馬がことごとく前哨戦で敗れたためです。

それにより前年の2歳女王レシステンシアに続き、2戦2勝のデアリングタクトが押し出される様に単勝4.2倍の2番人気となりました。

レース当日、4月12日は朝から雨が降り続けていました。

良から稍重、そして重へと馬場は悪化。

デアリングタクトは末脚の切れが持ち味なので、この雨は不利になるのではと見られていました。

そうした中、スタートが切られるとレースは予想通りスマイルカナが逃げて、1番人気レシステンシアが外から2番手で続きました。

デアリングタクトは18頭中12、3番手の中団のポジションで、じっくり脚をためていきます。

そして最終コーナーを回り、レシステンシアがスマイルカナをかわして先頭に立った時、
デアリングタクトはまだ12番手付近にいました。

先頭をいく2頭まではおよそ8馬身もの差があります。

しかしデアリングタクトは、一頭だけグングンと加速。

異次元の末脚を伸ばし、外から差を詰めるとゴール前30mでレシステンシアを捉え、そのまま一気に1馬身半差をつけて完勝しました。

デビューから3戦目での桜花賞制覇はキャリア最少タイ記録で、1948年のハマカゼ、1980年のハギノトップレディ以来40年ぶり史上3頭目となりました。

また、無敗での桜花賞制覇は2004年のダンスインザムード以来16年ぶりのこととなったのです。

さらに主戦の松山弘平騎手のG1制覇は2017年のアルアインによる皐月賞以来で、桜花賞は初勝利。

杉山調教師、馬主のノルマンディーサラブレッドレーシング、生産者の長谷川牧場は、いずれもG1初勝利でした。

父馬のエピファネイアにとっても、これが産駒による重賞初勝利とまさに記録づくしの勝利となりました。

史上初の無敗牝馬3冠達成

デアリングタクトの快挙はこれだけに留まりませんでした。

5月のオークスでは、単勝1.6倍という圧倒的1番人気に支持されると、その期待に応えて躍動します。

前走と同じく道中は後方にいたデアリングタクトでしたが、
最後の直線で狭い馬群を割って抜け出してくると、オークス史上最速の上がり33秒1の鋭い伸び脚を見せ、ゴール前で先頭の2頭をまとめてかわして快勝。

ガッツポーズを繰り返した松山騎手は「1、2コーナーで狭くなったり、ぶつかったりしてポジションが下がったので、脚をためることに専念しました。
直線も少し狭くなりましたが真ん中を狙って、しっかり伸びてくれて強い競馬でした。頑張ってくれた馬に、ありがとうと言いたい」と牝馬2冠制覇の喜びをかみしめるように話しました。

無敗での牝馬2冠は1957年のミスオンワード以来63年ぶり史上2頭目の快挙となりました。

その後、放牧に出されたデアリングタクトは9月2日に栗東へ帰厩します。

春に比べて馬体が20kgほど成長し、馬体重は490kgあまりになっていました。

そして休養明けぶっつけ本番で、史上初となる無敗での牝馬三冠達成に挑むことになったのです。

10月の秋華賞では、前日に雨が降ったことで朝から芝コースは重馬場となっていました。

しかし朝から晴天になり、発走までには馬場は「稍重」まで回復しました。

レースでのデアリングタクトの単勝倍率は1.4倍と圧倒的な支持をうけていました。

レースでは、スタートでデアリングタクトは前肢を上げ1馬身ほど立ち遅れてしまいます。

これには観客が大きくどよめきましたが、デアリングタクトと松山騎手は冷静に後方を追走します。

そして向こう正面を少し過ぎたあたりから、徐々に前へと進み始めました。

しかし最終コーナーを回るとき左手前のままで走ってしまい、やや外にふくらんでしまいます。

それでも直線を向くと、残り200メートルで手前を直して一気に先頭に並びかけました。

そして残り100メートルで抜け出し、先頭に立ったのです。

内外両側から追いすがる馬がいましたが、最終的には2着のマジックキャッスルに1.1/4馬身の差をつけてゴールしました。

これによりデアリングタクトはメジロラモーヌスティルインラブアパパネジェンティルドンナアーモンドアイに続く、史上6頭目の牝馬三冠馬となりました。

そして無敗では史上初の牝馬3冠の達成となりました。

鞍上の松山騎手は馬上で何度も左手を突き上げ、3冠を表す“スリーピース”で歓喜を表しました。

その後、約1月半の休養を経て、デアリングタクトはジャパンカップへと挑みます。

そこではアーモンドアイ、そしてコントレイルも参戦し史上初の3頭の三冠馬によるレースが開催されました。

結果はアーモンドアイ、コントレイルに次ぐ3着となりましたが非常に見応えのあるレースで競馬の歴史に残る名勝負の1つとなりました。

こうして、年間で5頭ほどしか生産しない長谷川牧場から生まれたデアリングタクトは、
セールでの低評価を覆し、日本の競馬界に輝く活躍を見せたのです。

デアリングタクトの完全復活を期待!

こうして牝馬三冠馬となったデアリングタクトですが、翌年から苦悩が続きます。

復帰戦の金鯱賞でまさかの2着に敗れると、続く香港のクイーンエリザベス2世カップでも3着となります。

さらにレース後右前肢繋靱帯炎を発症していたことが分かり、長期休養に入ることとなりました。

そして5歳となった2022年、約1年1カ月ぶりの復帰戦として選んだヴィクトリアマイルで6着、
続く宝塚記念で3着と力を見せるも、続くオールカマーでは再び6着となってしまいます。

こうして牝馬三冠を達成して以来、勝ち星から遠ざかっている状況ですが
復活してまた強いデアリングタクトを見たいところですね。

人々の低評価を覆して、無敗の牝馬三冠を達成した彼女ならきっとできるはずです。

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