
現役時代にはライバルとしてしのぎを削ったウオッカとダイワスカーレット。
未だにどちらが強いのか意見が分かれる2頭ですが、
2023年、ついにその血が両方とも入った馬が誕生しました。
今回はファン垂涎のウオッカとダイワスカーレットとのライバル関係と、
その両方の血が入った馬についてご紹介します。
現役時代にライバルだった2頭

まずはウオッカとダイワスカーレットのライバル関係について簡単に振り返っていきましょう。
ウオッカとダイワスカーレットはともに2004年に生まれました。
2頭の初めての戦いは2007年3月のチューリップ賞でした。
この時ウオッカは既に阪神ジュベナイルフィリーズを勝利しているG1馬で、
一方のダイワスカーレットは前走のシンザン記念で2着となっており、重賞をまだ1つも勝っていませんでした。
そのため1番人気はウオッカで、単勝オッズは1.4倍に支持されていました。
レースでも逃げるダイワスカーレットに直線でウオッカが迫ると、クビ差をつけてウオッカが勝利します。
ただ3着のレインダンスとは6馬身もの差がついており、いかに2頭が飛び抜けていたかが分かるレースでした。
次の戦いは、牝馬クラシックの一冠、桜花賞でした。
ここでは前哨戦を制したウオッカが再び単勝1.4倍の1番人気に支持されますが、
今度は先行したダイワスカーレットが、ウオッカに1と2分の1馬身差をつけて快勝します。
これにより、ダイワスカーレットとウオッカの対決は1勝1敗となりました。
決着は続くオークスでと思われましたが、この時ウオッカ陣営はオークスではなく日本ダービーに出走することを選択します。
これはダイワスカーレットと戦うよりも、
牡馬たちとダービーで戦った方が勝てる可能性が高いと陣営が判断したことが理由の1つだと言われています。
それほどまでに評価されたダイワスカーレットでしたが、残念ながらオークス直前に感冒による熱発で回避となってしまいました。
この時のことについて、ウオッカを管理していた角居調教師は
「ダイワスカーレットのいないオークスは想定していないし、
もしそうであるならばオークスの選択肢という可能性は限りなく大きかったであろう」と後に振り返っています。
つまりダイワスカーレットが出走しないのならダービーではなくオークスを使っていたというのです。
それでもウオッカはダービーで、見事64年ぶりの牝馬による勝利を達成します。
まさに世代トップの実力を見せつけたウオッカですが、
もしダイワスカーレットという存在がいなければ、この牝馬によるダービー制覇という偉業は成し遂げられていなかったかもしれません。
そうしたことがあった中、秋には桜花賞馬とダービー馬による秋華賞での戦いが始まります。
この時の1番人気は三度ウオッカで単勝2.7倍に支持されました。
ただ、ダイワスカーレットの単勝は2.8倍の二番人気となっており、ファンも実力はほぼ同じと見ていたようです。
レースではヒシアスペンが強引に主張しダイワスカーレットは2番手となりますが、
4コーナーで先頭に立つと、後方大外から追い込むウオッカらを振り切り快勝します。
これにより2頭の対決はダイワスカーレットの2勝1敗となりました。
続くエリザベス女王杯ではウオッカが直前で取り消し、ダイワスカーレットが優勝。
さらに年末の有馬記念ではダイワスカーレットが2着となる中、ウオッカは11着と大敗したことで、
ダイワスカーレットの方が強いのではという意見が出てくるようになります。
その後はしばらく2頭と路線がかぶらず、通算で4度目の対決となったのは2008年11月2日に開催された天皇賞(秋)のことでした。
東京競馬場との相性の良さを買われ、単勝2.7倍の一番人気となったのはまたもウオッカでした。
そしてレースでは逃げるダイワスカーレットに対し、ウオッカはディープスカイを挟む形で並びかけ、
最後は見事ハナ差でダイワスカーレットをくだしました。
チューリップ賞以来となるウオッカの勝利により、どちらかが勝利をしたレースに絞れば2勝2敗というまさに互角な状況となったのです。
同世代に生まれた牝馬でありながら、牡馬と混じっても強い競馬を見せる2頭はまさに永遠のライバルといった関係でした。
こうしてライバル関係は最終的な決着を見せないまま、2頭は引退し繁殖牝馬となりました。
Expand All繁殖牝馬となった2頭の名牝

現役引退後に繁殖牝馬となった2頭ですが、その繁殖実績はどうだったのでしょうか。
まずはウオッカです。
ウオッカは現役引退後、アイルランドへと渡りました。
現地ではシーザスターズやフランケルなど、ヨーロッパ最高の馬たちと種付けをしていきました。
産まれた子はどの馬も非常に大柄で、牝馬でも500kg前後、牡馬では580kgを超える馬も出てきました。
そして産駒のほとんどは、その後日本へと渡りデビューを迎えていきます。
産駒の中で比較的目立った成績をあげたのは、4番仔であるタニノフランケルでした。
タニノフランケルは2歳の8月にデビューをすると、徐々に力をつけてきて3歳の10月にオープン入りを果たします。
そして中山金杯3着、小倉大賞典で2着など重賞でも活躍しました。
その後は中々結果が出ず障害にも挑戦しましたが、6歳で中央登録を抹消することとなりました。
抹消後はサラブレッドオークションに出品されましたが、直前で取り消しとなり、
2021年8月には種牡馬となることが発表されました。
重賞こそ勝つことはできませんでしたが、父フランケル、母ウオッカという超良血であることが評価されたようです。
調べたところ、シンジケートの会長はトウメイやサクラローレルなどを生産した谷岡牧場の谷岡康成氏が務めており、
今後日高地方で活躍馬を出していくことが期待されます。
種付け料は30万円に設定され、2022年には57頭と種付けをしています。
残念ながらウオッカは2019年に亡くなってしまいましたが、その血はタニノフランケルや牝馬のケースバイケースらを通してつながっていきそうです。
一方のダイワスカーレットはまだ現役の繁殖牝馬として活動しており、2023年1月時点で11頭の子を産んでいます。

また、2023年にはブリックスアンドモルタルの子が産まれる予定です。
ダイワスカーレットの子で特徴的なのは、なぜか牝馬ばかりだということです。
初年度産駒であるダイワレーヌから実に10頭連続で牝馬が産まれています。
2021年に産まれたロードカナロアとの子がようやく牡馬となったため、
今後種牡馬としてダイワスカーレットの血をつなげていくことができるかに注目が集まります。
また、現状産駒の中で古馬のオープンとなった馬はいませんが、
牝馬ばかりを産んだダイワスカーレットですからその血は牝系で広がりを見せています。
こうして2頭ともその血を次世代へとつなげており、2023年ついにその血が混じり合う時がやってきました。
ついにウオッカとダイワスカーレットの血が交わる

2023年1月9日、ついに奇跡が起こりました。
ウオッカとダイワスカーレット両方の血が入る馬が誕生したのです。
父はウオッカの子であるタニノフランケル、母はダイワスカーレットの孫にあたるスカーレットテイルという血統で、
日高町の白井牧場にて生まれました。
もともと2022年にはタニノフランケルの初めての種付け相手としてスカーレットテイルが選ばれたことでも少し話題になりましたが、
その後無事に産まれてくれました。
スカーレットテイルの馬主さんがYouTubeでその出産の様子をライブ配信をしていたこともあり、
その産まれた瞬間には数千人のファンが見守っていました。
2007年のクラシックでしのぎを削った馬がこのように一つの血統表の中に入ったというのは感慨深いものがありますね。
産まれたのは牝馬とのことなので、再びこの2頭の様な素晴らしいレースを見せてくれることを期待したいところです。