
2023年のダート界で、一番の注目と言ってよいかもしれない馬が現れました。
それがプロミストウォリアです。
この馬は2023年時点で6歳と年齢を重ねているのですが、これまで7戦しかしていません。
しかしその7戦目となる2023年1月には、4連勝でG2東海ステークスを勝利しました。
まさに遅れてきた大物と言えるプロミストウォリアですが、
一体なぜここまで出世が遅れたのでしょうか。
そして今後のG1での期待について見ていきたいと思います。
走る度に骨折してきたプロミストウォリア

プロミストウォリアは2017年に
父マジェスティックウォリアー、母プロミストスパーク、母父フジキセキという血統で生まれました。
1歳になるとシルクホースクラブにて総額2000万円、一口4万円で募集にかけられました。
プロミストウォリアは1歳の頃から「ポテンシャルを感じる一頭」と評価されており、育成段階での評判も高い馬でした。
そのため当初は早期のデビューも考えられていましたが、
2歳の6月に、大腿骨の後ろ膝に近い箇所に骨棘という骨同士の摩擦や変形が見られました。
翌7月にそれを除去する手術をしたため育成が遅れ、デビューは3歳となった2020年3月の未勝利戦でした。
既走馬相手のレースでしたが、プロミストウォリアは先行して4コーナーで先頭に立つと
2番手のモンサンイルベントを振り切り快勝します。
この時の勝ち時計は、同じ日に開催されていた古馬2勝クラスよりも早い優秀なものでした。
そのタイムから今後出世街道へと進むと思われましたが、ここで再びアクシデントが彼を襲います。
レース後に右前橈骨遠位端という右脚の骨折が判明したのです。
そのため2戦目は、最初のレースから9ヶ月後の2020年12月となったのです。
この時すでに同年代ではコントレイルはクラシック三冠を達成し、
ダートでもカフェファラオが古馬相手に頂点を争っていました。
そうした中で2戦目の1勝クラスに挑んだプロミストウォリアは、
最後の直線で内ラチにぶつかるアクシデントがありながらなんとか2着を確保し、敗れはしたものの能力の高さを見せました。
しかしまたもやここでトラブルが発生します。
ラチにぶつかった事自体は大きなケガにつながらなかったものの、
その後の検査で再び右前橈骨遠位端を骨折していることが判明したのです。
これによりプロミストウォリアは休養に入り、復帰戦となる3戦目にはすでに4歳の8月となっていました。
しかも久々となるこのレースで4着になると、
今度は左脚の橈骨遠位端を骨折していることが判明します。
これで3度走り、3度骨折という異常事態となってしまいました。
能力が高いからこそ身体がそれに追いつかず、レースを走るたびに骨折をしてしまったのでしょう。
プロミストウォリアは手術で骨片を取り除いた後、再び休養に入り成長を促すとともに復帰へと調整が進められていきました。
そして4戦目となったのは2022年10月で、この時プロミストウォリアは5歳となっていました。
すでに同年代のコントレイルは引退し、カフェファラオはフェブラリーステークスを連覇、
さらにテーオーケインズは前年に帝王賞やチャンピオンズカップを勝利してダート界を引っ張る存在になっていました。
そうした同期が最前線で活躍をしている中、プロミストウォリアはここでついに覚醒をします。
年齢を重ねたことで身体が成長し、脚元が固まってきたのです。
そして4戦目となる復帰戦では、今村聖奈騎手を背に実力の違いを見せつけて逃げ切ります。
道中から誰にも先頭を譲らず、ラスト3ハロンでも最速という圧倒的な強さを見せたプロミストウォリアでしたが、
今度は脚を骨折することはありませんでした。
もちろん脚元にはまだ不安が残るものの、ようやく能力に身体が追いついてきたようです。
そして陣営はそこから中1週で2勝クラス、1ヶ月半空けて3勝クラスを走らせ
プロミストウォリアは見事その期待に応えます。
特に2022年12月に走った3勝クラスの摩耶ステークスでは、
直線で後続を突き放し、6馬身差の圧勝劇を見せました。
これにより、プロミストウォリアは3連勝でようやくオープンクラス入りを果たしたのです。
そして2023年に6歳となったプロミストウォリアは、7戦目にして重賞へと挑戦することとなりました。
ダートでは3勝クラスと重賞との間には大きな壁があると言われています。
これまで多くの馬が連勝してオープンクラス入りをしたものの、重賞で跳ね返されてきたのです。
そのためプロミストウォリアにとってこの東海ステークスへの挑戦は、
まさに今後の将来を占う試金石となるレースでした。
そんな重要な一戦でしたが、プロミストウォリアはスタートしてすぐにハナに立つと、
そのままの勢いであっさりと先頭でゴールを駆け抜けました。
途中で1番人気ハギノアレグリアスがカラ馬に邪魔されるといったアクシデントもありましたが、
これによりプロミストウォリアは4連勝でG2を制したのです。
鞍上のムルザバエフ騎手は「乗っていただけでした。G1に挑戦するならチャンスはある」と語っており、
その能力を高く評価していました。
こうして重賞の壁もすぐに突破したプロミストウォリアですが、彼は一体何がすごいのでしょうか。
Expand Allプロミストウォリアの何がすごいの?

まず1つは先行力です。
ダートは逃げ馬の勝率が高く、前に行く馬が有利な馬場であることが多くなります。
特に地方競馬では直線も短く、より逃げ馬が有利になります。
そのため重賞でも楽に先頭へ立てる先行力というのは、非常に強力な武器となるのです。
また、直線での二の脚がある点もプロミストウォリアの魅力です。
2022年12月の摩耶ステークスでは、道中逃げながらも直線のラスト3ハロンでは上がり最速を叩き出しています。
また、東海ステークスでもスタートして2ハロン目で11.6と脚を使っていながら
ラスト3ハロンはハギノアレグリアス、ロードレガリスに続く上がり3位の脚を繰り出しています。
逃げた馬が上がり3ハロンでも上位の脚を見せれば、後ろから来る馬が勝てるはずがありません。
こうした先行力と最後の直線で再び伸びる二の脚を繰り出す点がプロミストウォリアの特徴と言えそうです。
それでは果たしてこの特徴はG1の舞台でも通用するのでしょうか。
G1を勝利しダート界のチャンピオンになれるか

プロミストウォリアの次戦はフェブラリーステークスを予定しています。
もちろん脚元との相談の上ですが、身体が固まってきた今であればそれほど心配はしなくて良いのかもしれません。
それよりも初距離となる1600m、そしてG1のスピードに対応できるかがカギとなりそうです。
フェブラリーステークスには現在、3連覇を狙うカフェファラオや、
デビュー以来連対を外していないレモンポップといった強敵が参戦を予定しています。
さらに今年は、フェブラリーステークスが国際競走になって以来初めてとなる外国馬も参戦する予定です。
もしこれらの馬に対して勝利することができれば、今後プロミストウォリアはダート界を引っ張っていく存在となっていきそうです。
そんな彼が所属する野中厩舎の逃げ馬というと、インティを思い起こします。
インティも未勝利から6連勝で東海ステークスを勝利すると、続くフェブラリーステークスも1番人気で優勝しました。
今のプロミストウォリアのキャリアはこのインティと重なる部分も多く、同じ様な活躍ができるかに注目が集まります。
野中調教師は両馬について「インティは完成度が高かった。プロミストウォリアは晩成でまだこれから良くなる」と語っており、
プロミストウォリアは6歳となった今も成長を遂げているようです。
普通に考えるといきなりのG1の舞台で結果を残すことは難しいかもしれませんが
レース毎に成長を見せるプロミストウォリアであれば、その快挙を達成することも期待できるかもしれませんね。
2023年のダート路線は、6歳の遅れてきた大物がダート界のチャンピオンになれるかに注目したいところです。