美浦トレセンが大改修!坂路の高低差と勾配が改善され西高東低の競馬に変化か

美浦トレセン大改革!西高東低変わりそう

競馬界では長らく関西馬が強い傾向が続いています。

その理由の1つが、美浦トレセンと栗東トレセンの施設の差にあると言われてきました。

特に坂路が大きく異なるため、トレーニングに大きな差が生まれると考えられているのです。

そうした中、ついに美浦トレセンの坂路が大改修されることとなりました。

さらに新コースの創設などもあり、美浦と栗東との差が今後なくなりそうになっています。

これにより今後関東馬だからといって軽視することはできなくなりそうです。

今回はそんな改修内容や、西高東低の理由などについて見ていこうと思います。

坂路の格差が成績に影響する?

坂路の格差が成績に影響する?

まずは坂路調教の意義と、
美浦と栗東とでどれだけ坂路が違うのかを見ていきましょう。

坂路調教というのは、その名の通り坂道を駆け上がる調教のことを指します。

高低差のある馬場を走ることで、短時間で強い負荷をかけることができます。

この坂路調教を繰り返すことで、心肺機能や後ろ脚の鍛錬になります。

また、スピードが出ないため脚にかかる負担を減らすことができると言われています。

つまりケガを最小限に抑えつつ、レースで必要な心肺機能の瞬発力を鍛えるのがこの坂路調教なのです。

その坂路で重要となるのが、高低差と勾配です。

あまりに急な坂だと馬が登れなくなってしまいますが、あまり高低差や勾配がない坂だと調教負荷をかけることができないからです。

そうした観点で美浦と栗東の坂路を見てみましょう。

美浦の坂路は現在高低差が18mとなっています。

一方で栗東の高低差は32mにもなります。

これだけでもかなり違うことが分かりますよね。

また、勾配にも差があります。

美浦の坂路は最初の270mが助走区間として勾配0%となっており、
そこから400mに渡って勾配0.625%、続く350mが3.0%、
そこをすぎると更に80mは勾配が4.688%となり、最後に馬を止めるための区間が100mあります。

つまり一番坂路調教の効果として期待できるのは、350mに渡る3.0%の勾配部分となります。

一方で栗東の坂路を見てみると、最初の助走区間から2.0%の勾配があり
若干のカーブを抜けた後の570mは3.5%の勾配となります。

そしてその後に馬を止めるために4.5%の勾配が100m、最後に1.25%の勾配が115mあります。

つまり栗東では300mに渡る2.0%の勾配と570mに渡る3.5%の勾配で調教負荷を高めることができるのです。

美浦では350m、3.0%の勾配、栗東では300m、2.0%の勾配と570m、3.5%の勾配。

こうした坂路調教での負荷の差が、東西の成績の差につながっていると考えられています。

実際、坂路の改修工事はかなり効果が見込めるものとなっています。

近年ノーザンファームと比較して苦戦が続いていた社台ファームも
牧場の坂路を改修してから成績が大きく向上しているのです。

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坂路を改修して社台ファームの成績が向上

坂路を改修して復活

社台ファームは近年、ノーザンファームに押され気味でした。

しかし最近は復活の兆しを見せています。

その要因の1つが社台ファームおよび山元トレーニングセンターの坂路コースを改修したことだと言われています。

まず北海道にある社台ファームでは、
2019年に全長は変わらないものの、最大勾配を2.5%から3.5%として馬場をウッドチップに変更しています。

これにより調教負荷をかけつつ脚元の負担を減らしました。

主に社台ファームではデビュー前の若駒やケガなどにより復帰を目指す馬が滞在しています。

そうしたレースがまだ先の馬たちもこうして坂路で鍛えていくことで、
競走能力の基礎となる心肺を鍛えているのです。

また、その社台ファームから次のステップへ進む際や、レースとレースの間の短期放牧先として活用されているのが
宮城県にある山元トレーニングセンターです。

いわゆる外厩と呼ばれるこの施設でも、
2020年に屋外坂路コースを全長750mから900mへと伸ばし高低差も23mから33mへとしました。

さらに馬場の素材もポリトラックからウッドチップへと変えています。

この改修について社台ファームの吉田照哉代表は「栗東トレセンの坂路に勝るとも劣らないスケールとなりました」と語っており
栗東のトレーニングセンターを1つの目標にしていることが分かります。

こうした改修や改善をしたことで、社台ファームの馬は2022年に躍進を遂げ
スターズオンアースやアスクビクターモアといった馬がG1を制しました。

社台ファームは2020年のJRA重賞において3勝のみでしたが、
2021年7勝、2022年15勝と着実に成績を上げています。

2023年もソールオリエンスやライトクオンタムなど楽しみな逸材が揃っており、
他にも様々な要因はありますが、坂路が好影響を与えていることは間違いなさそうです。

このように馬の成績に影響を与えると見られる坂路調教ですが、
美浦トレセンではどのように改修されるのでしょうか。

美浦トレセン坂路の改修内容

美浦トレセン坂路の改修内容

結論から言うと、今回の改修により美浦トレセンの坂路は、栗東トレセンのものとほぼ同じ高低差になります。

コース前半を最大15m掘り下げることで、高低差を18mから33mへと変更します。

これにより270mあった勾配0%の助走区間にも勾配がつき、最初から調教負荷がかけられるようになります。

今後この新坂路によるトレーニングが始まれば、関東馬の成績が向上していきそうですね。

ただ、この改修のため、ダービー後の約4ヶ月間(5月29日から10月2日まで)坂路は閉鎖され使用できなくなります。

そのためこの時期には関東馬の成績が落ち込むかもしれません。

また、この坂路以外にも美浦トレセンは2018年から大規模な改修工事をしています。

2019年9月に新たなウッドチップコースの運用がスタートしていますし、
坂路と同じ時期に南馬場にダートのEコース周回走路が新設されます。

他にも2021年には調教師や報道陣が利用する南馬場の新スタンドもできていまし、
障害コースも新しいコースができています。

さらに競走馬診療所も新たに建設されていき、全ての改修が終わるのは2026年を予定しています。

約8年がかりとなる大規模な改修をする最大の理由は、やはり西高東低の状況を変えることです。

トレセンはJRAの施設で、調教師たちはその施設を借りて運営をしています。

つまりトレセンの施設の差によって東西で成績に差がついてしまうというのは
JRAの責任である部分が大きいと言えるのです。

施設の差によって成績が変わるのであれば、調教師のモチベーションは下がってしまいますし、
馬主も大事な馬は関西へと預けようと考えてしまいます。

そうした環境による格差をなくすため、今回JRAが動いたということのようですね。

他にも西高東低が続く理由としては、栗東トレセンの近くにインターチェンジがあり輸送に便利なことや
西高東低が一般常識化してしまったことで、馬主が有力馬を栗東に預けやすいといったことなどが考えられます。

高速道路へのアクセスに関してはすぐに改善することはできませんが、
できる限りのことはしていこうというJRAの姿勢が今回の美浦トレセンの大改修から感じ取れますね。

もしかすると今後数年間で西高東低の常識が大きく変わるかもしれません。
競馬ファンとしてはそうしたことも頭に入れて馬券を検討していきたいですね。

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