
地方競馬所属の馬はこれまで中央競馬の高い壁に何度も跳ね返されてきました。
特に地元の交流競走ではなく、中央競馬のレースに挑んだ時、
そこで勝つのは非常に難しいこととなっています。
実際、これまで地方競馬に所属しながら中央競馬のG1を制したのは、
メイセイオペラただ一頭だけです。
コスモバルク、フリオーソ、トーシンブリザードといった名馬も残念ながら中央競馬の壁に跳ね返されました。
2023年のフェブラリーステークスでもスピーディキックが挑戦し、
不利もありながら6着に健闘しましたが勝利を果たすことはできませんでした。
そうした中、再び地方競馬から中央競馬へと挑もうとする馬が現れました。
しかもまだ3歳であることから将来も期待できます。
今回はそんな地方から生まれそうなスターについて見ていこうと思います。
最強の3歳馬が中央競馬へ

地方競馬所属のまま中央競馬へと挑もうとしている馬は、ヒーローコールです。
彼は2020年5月2日に新ひだか町の坂本春雄さんの牧場で生まれました。
父ホッコータルマエ、母アインライツ、母父ティンバーカントリーという血統です。
父のホッコータルマエは現役時代にダートG1を10勝した名馬で、ヒーローコールは3世代目の産駒となります。
母父のティンバーカントリーもムガムチュウやアドマイヤドンなどダートG1を勝利した馬を出した種牡馬で、
ヒーローコールは完全なダート血統と言えます。
そんなヒーローコールは2021年に開催された北海道サマーセールで300万円という価格で
現在のオーナーが代表を務めるY.Y.Blood Stockにより落札されています。
このオーナーは山口ステーブルという育成牧場を手掛けている方で、
新馬戦で大外を走り勝利したことで話題になったリフレイムの馬主でもあります。
そんなオーナーの下で順調に育成が進められたヒーローコールは、
浦和の小久保厩舎へと入厩します。
小久保厩舎はこれまでブルドッグボスやノブワイルドなど多くの名馬を管理してきた
地方競馬の中でもトップクラスの厩舎です。
そんな小久保厩舎で調教を進めたヒーローコールは、2022年5月30日に浦和競馬でデビューを迎えます。
単勝1.3倍の人気に応え勝利をすると、次走こそハナ差の2着に敗れてしまいましが
そこから4連勝で、南関東の重賞・鎌倉記念を制しました。
そしてその実績を携えて、年末にはダートG1全日本2歳優駿に挑みます。
ここでは中央競馬の馬たちと初めて戦うこととなり、
4番人気で4着に敗れますが地方馬としては最先着を果たします。
G3エーデルワイス賞を制したマルカラピッドには先着しており、
この世代のダート界ではトップクラスの実力があることを証明しました。
このことからヒーローコールはNAR2歳グランプリに選出され、地方競馬の2歳王者となりました。
そして年が明けた2月23日、ヒーローコールは雲取賞で復帰をします。
このレースは南関東クラシックの登竜門となる競走で、
2024年からはG3へと格上げされることが決まっています。
そんな重要な一戦には、一頭の強力なライバルも出走しました。
それがマンダリンヒーローです。
マンダリンヒーローは大井競馬の所属で、これまで4戦4勝の成績で重賞ハイセイコー記念を制しています。
2頭のヒーローが激突した雲取賞でしたが、レースではヒーローコールが1番人気となります。
そしてレースでは早めに先頭に立ったヒーローコールに、最後の直線でマンダリンヒーローが迫ってくるも、
ヒーローコールがしのぎきり1馬身差をつけて勝利しました。
これによりヒーローコールはこの世代における地方競馬のトップであることを証明しました。
初騎乗となった森泰斗騎手も「見た目以上に余裕があった」「今年の主役を張れる馬」とコメントを残しています。
そして次走は、いよいよ中央競馬のレースへと乗り込むことを発表したのです。
Expand All中央競馬へと戦いを挑むヒーローコール

ヒーローコール陣営が次走として発表したのは、
3月25日に中山競馬場で開催される伏竜ステークスです。
この伏竜ステークスはオープン競走なのですが
中央競馬ではこの時期に3歳ダートの重賞レースがないため、
実質的に中央競馬におけるダートのトップクラスが集まるレースとなっています。
昨年も、後にG1ジャパンダートダービーを制するノットゥルノや、
G2名古屋グランプリ、G3ユニコーンステークスを制するペイシャエスが出走するなど
非常にハイレベルな一戦となりました。
そのためここをヒーローコールが勝つようだと、今後が非常に楽しみになります。
中央競馬への遠征も問題がないことを証明できますから、
秋のチャンピオンシップや翌年のフェブラリーステークスへも期待ができます。
現在のところ、伏竜ステークスへの参戦を表明している中央馬としては
前走の未勝利戦で2着に6馬身差をつけて圧勝したマオノアラシや、
1歳時に2億円で落札された良血で、昨年末に1勝クラスを制したユティタムなどがいます。
こうしたメンバーに対して、かつて300万円で落札されたヒーローコールはどのような競馬を見せるのでしょうか。
まずは3月25日のレースを楽しみにしたいですね。
メイセイオペラ以来の中央G1馬になれるか

伏竜ステークスでヒーローコールがどのような競馬を見せるのか楽しみですね。
まだ気が早いかもしれませんが、将来的にメイセイオペラ以来となる地方競馬所属による
中央競馬のG1勝利を果たすのは、このヒーローコールなのかもしれません。
JRA勢とまともにやりあえそうな地方馬の登場は、
競馬全体の盛り上がりにも欠かせません。
超えるべきハードルは高いですが、ぜひ良い走りを期待したいところですね。