
サトノダイヤモンドや、サトノアラジンなど『サトノ』の冠名で知られる里見治氏。
その里見氏が法人馬主として2017年に設立したのがサトミホースカンパニーです。
しかしその業績はかなり悪く、この度解散が発表されました。
この解散発表によりサトノの馬たちはどうなってしまうのでしょうか。
今回はそんなサトノの状況について見ていきたいと思います。
サトミホースカンパニーが大赤字で解散へ

サトミホースカンパニーの解散が分かったのは、2023年2月27日のことです。
官報にサトミホースカンパニーに関する情報として
合併公告というものが掲載されていました。
それによると、サトノエステート神谷町という会社を存続会社として
サトミホースカンパニーとサトノエステート銀座の権利義務を引き継ぐとの記載がありました。
つまり、サトミホースカンパニーは解散することとなったのです。
そして驚きだったのがその合併公告とともに掲載されていた決算公告でした。
その数字を見てみると、資産合計が68億円と潤沢ではあるものの、
利益剰余金は34億1248万円のマイナスで、そのうち当期純損失が8億7395万円となっていたのです。
これはどういうことかと言うと今期の赤字が8億7395万円あり、
累計のマイナスが34億円超だということです。
今回は第5期の決算ですから、単純に考えると5年の間に34億円の損失を出したと言えます。
サトノは高額馬を多く所有しており、そうした馬たちによる費用が大きくのしかかったのでしょう。
例えば2018年のセレクトセールではディープインパクト産駒のリアアントニアの18を2億9000万円で落札しています。
ただその後残念ながらデビュー前に亡くなってしまいました。
保険金が入ってきているはずですが、こうしたトラブルが起きてしまうのが馬でもあります。
また、他にはベルワトリングの18を2億5000万円で購入し、
サトノバトラーと名付けましたが2023年3月時点でまだ未勝利戦の1勝しかしていません。
獲得賞金額は977万円で、現在のところ大きな損失を出してしまっています。
他にも1億6000万円で落札したサトノペルセウスが2勝クラス、
1億8000万で落札したサトノシャロームも2勝クラスと厳しい状況が続いています。
やはり馬主として収支をプラスに持っていくことがいかに難しいのか、
こうしたものを見ると分かりますね。
それでは法人が解散した今、サトノの馬たちはどうなっていくのでしょうか。
Expand All今後のサトノはどうなる?

サトミホースカンパニーが解散したことで気になる今後ですが、
基本的に、里見治氏個人が所有することとなっていきそうです。
つまりこれまで法人名義で馬主をしていたものを、解散をきっかけに個人名義にしたようです。
サトミホースカンパニーが第5期だったということからも分かるように、
もともと里見氏は個人名義で馬主を続けてきました。
それを2017年に法人化してサトミホースカンパニーとしていましたが、
再び個人名義に戻したというのが現在の状況です。
2017年に法人化したのは丁度この時期に
サトノダイヤモンド、サトノクラウン、サトノアレス、サトノアラジンといった馬たちがG1を勝ち
種牡馬入りを果たしたことで入ってくる金額が大きくなり、事業性が出てきたからという理由がありそうです。
ただ、その後はG1を勝つ馬は現れず種牡馬入り時に大金が入ってくるということもなくなってきたため
再び個人に戻したものと推測されます。
また、2016年に金融商品売却をめぐり
約30億円の申告漏れを東京国税局から指摘されたことも、ある程度関係していそうです。
この指摘により追徴金10億円が課された里見氏は、その処分の取り消しを求め訴訟を起こします。
そして2021年には東京地裁が里見氏側の主張を全面的に認めて、処分が取り消されました。
取り消されはしたものの、そこまでにかかった労力は相当なものだったと思われます。
里見氏はセガサミーホールディングスの代表取締役会長を務めており、
馬主業で損失を出しても問題がないほどの資金力を誇る方です。
そのため、細かく節税をしていくというよりは、
とにかく税務上面倒なことが起きないようにすることが重要です。
そのため法人にしたり個人に戻したりというのは、短期的に節税になるからという話ではなく、
本業と馬主活動での収入のバランスを見て面倒なことが起こらないよう、
国税局に疑われないわかりやすい形で対応するための行動だと言えます。
そんな里見氏はすでに81歳という年齢を迎えていますが、ここ最近の購買活動も活発です。
2022年のセレクトセールでもサプルマインドの22を1億7000万円、ヴィアフィレンツェの22を同じく1億7000万円、
そしてサトノダイヤモンド産駒のウィキッドリーパーフェクトの21を1億1500万円で落札しています。
そのため今後もサトノの冠名をつけた高額馬たちが、大舞台で活躍を見せてくれそうです。
ちなみに里見氏の妻や長男も馬主として活動しており、
2019年にマーチステークスを勝ったサトノティターンや、
2010年にユニコーンステークスなどを勝ったバーディバーディなどを所有しています。
最近はダイワやシゲルなどの冠名で親しまれてきた名物馬主が亡くなったことで、
競馬界からその冠名がなくなろうとしています。
そうした中で、サトノという冠名は次の世代でも躍動していきそうです。

ちなみに2016年に朝日杯フューチュリティステークスを勝利し種牡馬入りしたサトノアレスは
2023年1月にトルコへと輸出されることが発表されました。
トルコへは古くはディヴァインライトが輸出され、ダービー馬を輩出する活躍を見せました。
そしてここ最近ではメールドグラース、ヴィクトワールピサ、クルーガーといった日本馬を次々と購買し
競馬のレベルを上げようとしています。
またサトノアラジンは2018年からニュージーランドでもシャトル種牡馬として活動しており、
その初年度産駒からは重賞馬としてグランドインパクトと、セイクリッドサトノの2頭が出ています。
特にセイクリッドサトノはニュージーランドで活動をしている浅野一哉騎手が騎乗して勝利しており、
今後このコンビがどのような活躍を見せるのかに期待が集まります。
このように世界でサトノの血は活躍を見せており、
今後は海外からサトノの名がつけた馬が逆輸入されてくることもあるかもしれませんね。
また、サトノの代表馬であるサトノダイヤモンドも、当初はなかなか産駒が勝てなかったものの
シンリョクカがG1阪神ジュベナイルフィリーズで12番人気ながら2着に入るなど、徐々にトップ戦線でも活躍馬が出てきています。
もともと産駒は長距離が得意で晩成傾向にあると見られているため、
今年、来年と年を追うごとに活躍馬が増えていくことを期待したいところです。
長年多くの有力馬を抱えながらG1を勝てなかった里見氏は、2016年頃から一気にG1を多く勝つようになりました。
しかしここ最近は再びG1を勝つような馬に巡り合えなくなっています。
今回個人名義に変えたことが良いきっかけとなり、新たなG1馬が誕生することに期待したいと思います。
今年のクラシック世代では、父サトノダイヤモンド、母チェリーコレクトという血統のサトノグランツに注目が集まります。
トップトレーナーの一人である友道康夫厩舎に所属しており、兄弟にはホープフルステークス3着のワーケアがいます。
セレクトセールで1億500万円で落札されたこの馬は、3戦目での勝ち上がりとなりましたが素質は高く評価されており
ドウデュースと追い切りをした際には食らいつく根性も見せました。
まだ一勝馬のため今後賞金を積み重ねていく必要はありますが、
もしダービーに間に合うようであれば、注目の一頭と言えそうです。