九州産馬がついに悲願達成か。G1制覇へと挑むイロゴトシ【中山グランドジャンプ2023】

日本競馬界において未だ達成されていない悲願があります。
それが九州産馬によるG1制覇です。
これまで幾度の挑戦があったものの、現在までその悲願は叶っていません。
しかし今回、G1を制する可能性が出てきました。
今回はそんな九州産馬によるG1制覇の可能性、
そしてこれまでの挑戦の歴史について見ていこうと思います。
九州産馬がG1へ挑む

まずは、今回G1制覇に挑む九州産馬について見ていきましょう。
その馬の名はイロゴトシです。
2017年3月7日に生まれた6歳の牡馬で、
父ヴァンセンヌ、母イロジカケという血統です。
兄弟にはイロエンピツ、イロコイザタなど母に由来する名前が付けられています。
生産は熊本県の本田土寿氏で、この牧場からは
G3北九州記念を制したヨカヨカも生まれています。
そんなイロゴトシは2019年7月にデビューをすると、2戦目で勝ち上がり
3戦目には九州産馬限定のオープン競走であるひまわり賞を制します。
その後重賞に挑戦するも跳ね返され、残念ながらクラシックへと進むことはできませんでした。
それでも4歳の5月には2勝クラスを制し、3勝クラスへと上がります。
その3勝クラスでも4着に入るなど健闘しますが、6歳となった2023年に障害競走へと転向します。
すると2戦目で勝ち上がり、続くペガサスジャンプステークスで1着と0.4秒差を3着となりました。
そして4月15日に挑むのが、J・G1中山グランドジャンプです。
障害転向から4戦目でのJ・G1への挑戦というのは無謀にも見えますが、
前走の勝ち馬であるビレッジイーグルが今回上位人気になりそうで
そこから0.4秒差であれば十分逆転が可能だと言えそうです。
特に飛越が上手な馬なので、うまくスタミナを消費せずに飛んでいくことができれば
初めてのJ・G1挑戦でも勝機はありそうです。
父のヴァンセンヌは現役時代に東京新聞杯を制し種牡馬入りをし
イロゴトシと同世代の2019年産が初年度となります。
ただ現在のところ中央競馬で重賞を制した馬がおらず
イロゴトシは九州産馬として、そしてヴァンセンヌ産駒として
初のG1制覇へと挑むこととなります。
これまで九州産馬は何頭かG1へと挑んできましたが
すべて跳ね返されてきました。
グレード制が施行された1984年以降、
JRAのG1に挑戦して5着以内に入った馬は
2008年、2010年の中山大障害に挑み3着、4着
さらに2011年の中山グランドジャンプで5着となったテイエムトッパズレ、
そして2020年に阪神ジュベナイルフィリーズで5着となったヨカヨカの2頭のみとなっています。
では、なぜこんなにも九州産馬は厳しい状況となっているのでしょうか。
Expand All九州での厳しい生産状況

九州産馬が厳しい理由の1つは、生産頭数があまりに少ないことです。
かつて九州ではアラブ種を中心に生産が活発に行われていました。
熊本県にあった荒尾競馬場ではアラブ系競走も盛んに開催されていたものの
現在アラブ系競走は全国的に廃止となったため、九州での生産頭数は年々減少していきました。
イロゴトシが生まれた2019年では、九州全体の生産頭数がわずか62頭にまで落ち込んでいます。
同じ年の北海道での生産頭数が7188頭であることを考えれば、これがいかに少ないかが分かります。
ここまで少ないと、それだけで活躍する馬が出てくる可能性は低くなるのですが
さらに父や母の質という面でも厳しい状況となっています。
やはり北海道が日本の競走馬生産の中心地ですから、
実績のある種牡馬の多くは北海道にいます。
そのため北海道から距離のある九州は不利になってしまうのです。
九州から北海道まで種付けするために移動するのは馬やスタッフにとって大きな負担となりますし、
輸送にはある程度の助成金が出るものの、費用が0にはなりません。
そうした地域による差をなくすため、鹿児島には日本軽種馬協会の九州種馬場があり
そこにケープブランコ、スクワートルスクワート、ネロの3頭が繋養されていますが
九州産馬が盛り上がるまでには至っていません。
こうした状況のため、なかなか九州からG1で戦えるような馬はなかなか出てこないようです。
ただ、最近ではその流れが徐々に変わりつつあるのも確かです。
盛り上がりを見せつつある九州の馬産

九州での馬産は、最近徐々にではありますが盛り上がりを見せています。
その1つが、テイエム牧場の存在です。
テイエム牧場は、テイエムオペラオーなどで有名な竹園正繼氏により開設された牧場です。
竹園氏の故郷は鹿児島県垂水市にあり、
九州から大レースに勝利する馬を輩出することを大きな目標に開設されました。
ここからテイエムチュラサンがアイビスサマーダッシュ、
テイエムトッパズレが先程ご紹介したように障害の大レースで健闘しました。
2010年には新テイエム牧場も開設しており、九州から全国へと通用する馬の生産を加速させています。
また、最近ではイロゴトシの生産である本田土寿氏の活躍も目立ちます。
かつて九州産と言えば鹿児島産であることが多かったのですが、
本田土寿氏の活躍により熊本からも活躍馬が出るようになっています。
こちらの牧場では、種牡馬の導入も積極的に行っており
2015年にはカンパニー、現在はアレスバローズを繋養しています。
特にアレスバローズは、父がディープインパクトということもあり
これにより九州にディープインパクトの血が入ってくることとなりました。
こうして九州の馬産を盛り上げようと尽力している姿を見ると
なんとか九州からG1を制するような大物が出現することを期待したくなりますね。
J・G1は障害競走のトップを決める争いですし
賞金額が6600万円と非常に高額なレースとなっています。
これを九州産馬が勝てば、馬産地にとって大きな出来事となります。
九州では「いつかは九州産馬でダービー制覇」を合言葉に、日々懸命に取り組んでいます。
その夢を実現するためにも、まずはイロゴトシの活躍に期待したいと思います。